てれドラぶろぐ

テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

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「感動した原因」を究極まで分析すると…

 クラシックというとメジャーどころしか聴かない私ですが、モーツァルトのクラリネット五重奏曲がこの上なくお気に入りです。
 モーツァルトといえば哀しみと喜びが同居している絶妙の感情というものを実に微妙に表現してくれてそこがたまらないわけですが、このクラリネット五重奏曲にはそういうモーツァルトの良さが見事に凝縮されているような気がしております。
 第一楽章。盛り上がり部分の旋律。微妙な心揺さぶる旋律というべきか、悲壮感漂う悲しみの絶頂の中で聴いているとたまらなくなってこのまま悲しみが増していくのかと思いきや、突然というかほとんど同じ旋律なのに瞬間で軽やかに穏やかな明るいイメージに鮮やかに変化していく。その瞬間が素晴らしいのですね。こういう曲を聴くと、悲しみと穏やかさという感情が極めて紙一重のところに存在してることをこの曲は端的に示してくれるわけです。
 そういえば小学校のころ、短調の曲は悲しく、長調の曲は明るい、と教わった記憶があります。したがって悲しい曲が明るく微妙に変化した瞬間というのは短調から長調に転調したのかも知れません。このあたりは楽譜を読めないため推測でしかありませんが、ではなぜ人は短調の旋律を聴くと悲しいキモチが誘発されるのでしょう。あるいは長調の曲を聴くとなぜ心が浮き立ったりするのでしょう。
 なぜこの曲調だと悲しいのか、なぜこの曲調のこの部分をちょっとだけ変えると明るいトーンと感じてしまうのか。

 ひょっとすると、このあたりの構造は科学で解明されていないのではないか。そう思えてしまいます。人間が太古の昔から継承してきたDNAの中に、この曲調は悲しく、この曲調だと明るく感じるよう、プログラムされている、としか言い様がない部分があるのではないでしょうか。



 そういえばこんなことを聴いたことがあります。「黒板を爪でひっかいたような音」をさせるとたいていの人は物凄く拒否反応を示しますよね。おもわず耳をふさぎたくなります。なぜあの音を我々はああも嫌うのか。それは一説によると、この音、猿の社会で外敵が現れた時に発する警戒の叫びに近いそうです。つまり太古、人間がまだ猿に近い存在だったときにこの音を嫌悪するようプログラムされた可能性があるそうです。

 こう考えると究極のところで、何によって人は感動するのか、感情を左右させるのか、という構造の根源的な仕組みまで解明することはほとんど不可能ということになるのでしょうか。

 そういえばコミック「のだめカンタービレ」の10巻以降のどこかで、音楽というのはもともと娯楽ではなかった、という解説が誰かの口から出ていました。音楽というものはもともと娯楽ではなく、学問だった、というのです。なるほど、この曲調だと人は感動する、それはなぜなのか。音と音とのハーモニーが奏でる組み立て。なぜ人は特定の旋律に心を揺らすのか。そこを分析しようとしたのかもしれないな、と気づかされるのです。

 では、テレビドラマや映画といった映像メディアはどうなのか。音楽と違ってやや複雑な存在でしょうが、基本は同じなのでしょう。
 映像と映像がつなげられることで成立しているこれらのメディア。その映像の組み合わせ、そして物語の組み立て、そのハーモニーによっていかに人はキモチを動かすのか。音楽よりもやや複雑でしょうが、こうした映像メディアについても究極のところなぜ人はこの映像と映像のつながりで心を動かすのか?なぜこの映像の組み立てでキモチが動くのか?そういう謎に挑むことが評論の一つの役割だと思い至るわけです。

 前に書いたようにテレビドラマを見終わって良かったか悪かったのか、それは一瞬で決まると思うのです。それは理屈じゃないのですね。
 なぜ感動したのか、感動しなかったのか、その仕組みを分析することは後付けであるが、その解析は、当然ながら音楽以上に複雑で難しいのだと思います。
 音楽ですら究極のところは太古の昔の記憶をDNAが継承してきたことによる感動という曖昧な推測でしかできないわけですから、複雑系の映像メディアとなると何をか言わんやとなるのです。

 案外、多くの人は自分が感動したドラマについてナゼ感動したのか、それなりに分析してみせているけれど、実は誤解していることが多いのではないか。感動の源泉を間違っていることが多いのではないかと思っています。
 で、そこを、「あなたが感動したのはこういうことですよ」と理解に導くのが評論の一つの役割でないかと思うのですが、実際には本質的な感動の源泉を評論する者すら誤解してしまっている場合があるように思うのです。そこが困った部分なのかも知れないです。

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