てれドラぶろぐ

テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

『家政婦のミタ』に日テレドラマの躍進をミタ

 『家政婦のミタ』が恐ろしいほどの話題となっています。

 小学校では、子どもたちが家政婦のミタさんの物まねをしまくっているそうです。そういえば、昨冬も同じような現象がありました。そう『Q10』でも前田敦子扮するロボットの物まねを小学生たちが学校でしていたそうですがその比ではありません。

 こういう風に社会現象になっていくというのはまさにテレビドラマがヒットしていくときに同時発生するもののようです。今回、それを久々にリアルで経験した気がします。

 脚本の遊川和彦さんは、これまでも『女王の教室』など多数の話題作を手がけてこられた方です。その作風の特長は何といっても、導入部でグッと視聴者を引きつける、圧倒的な「誘引力」でしょう。独特の設定をキャラに持ち込むことがウマく、そこでググッと視聴者をひきつけてしまう。そして一挙に引っ張っていくわけです。

 ただ、多くの作品では、残念ながらそれがラストまで持続しない。だんだん話が破綻していくケースが非常に多かった。中盤以降、行き当たりばったりの展開になってしまうことが少なくなく、ひょっとしたら導入部だけカッチリ考えるけどその先はあまり細かく考えずに突入しているのではないか、とさえ思わせることもありました。

 もっとも、ストーリーの骨格をキッチリ作り込んでドラマをはじめることがテレビドラマの作劇として最上というわけではありません。視聴者のビビッドな反応をドラマの展開に盛り込んだりいろんなスタッフ・キャストの意見をフィードバックしてドラマ展開を考えていくほうが生き生きとした話が出来上がるという考えもあるわけです。しかし、ドラマを一つの「作品」と考える、ドラマファンの間にはこういう作り方は何か邪道に映ってしまいがちなのですね。ドラマファンの間でも、これまで遊川さんの作品に若干の抵抗を感じる向きがありました。私もその一人で、せっかく面白く始まった物語が途中でどんどん破綻していく。主人公の衝動的な、行き当たりばったりの行動で話自体がグシャグシャになっていって大いに落胆させられることが少なくなかったのです。

 したがって遊川さんの場合は冒頭部の誘引がラストまで持続する比較的短い回数の連続ドラマや単発ドラマで本領を発揮されることがこれまで多かったようにみえます。
 最近の遊川作品を見ても、直前の連ドラの成功作といえる『女王の教室』(2005)から今回の『家政婦のミタ』(2011)までの6年間。その間に製作された作品のうち、高い評価を受けた作品としては、『リミット~刑事の現場2』(全5回)と『ニセ医者と呼ばれて~沖縄・最後の医介輔~』(単発)が挙がります。いずれも短い。したがって冒頭の勢いで最後まで突っ走れてしまう面があるわけです。一方、この期間の10話以上の長丁場の連続ドラマとしては『曲げられない女』『リバウンド』があるわけですがいずれもラストまでその誘引力を持続させられませんでした。『曲げられない女』における、司法試験を長年すべってきた菅野美穂扮する女性、『リバウンド』における、食べることが生きがいの女性・相武紗季のデブぶり。いずれも「オオッ」と冒頭部でひきつけられるわけです。しかし、いずれも途中までしか興味は持続せず、中盤以降は場当たり的な展開に陥って精彩を欠いていったのです。

 今回の『家政婦のミタ』の構造も、冒頭で家政婦のミタという特異なキャラの人物を登場させたところまでは同じ構造です。細かくみていくと今回の『家政婦のミタ』でもドラマ中盤で中だるみのような箇所もなかったとはいえませんでした。長谷川博己扮する父親が「これからどうやっていけばいいのか」と悩んでいる描写はまるで作り手である遊川和彦さんの苦悩を示しているのではないかと思えたほど。

 ですが、今回は何とかうまい具合に乗り切った。最後まで無事着地させてくれそうです。まだ最終回まで予断を許しませんがどうやら心配は杞憂に終わりそうです。
 『女王の教室』でも同様でしたが、こういう、導入部でググッとひきつける書き手はウマく書き進めて視聴者の興味を持続させることができた場合には今回のような大きなヒットにつながる。そう実感させるものがあります。

 それにしても、この手の現象化したドラマというのは久々でした。やや狭い範囲での現象としては、テレ東の『モテキ』ぐらいでしょうか。

 そして、こういうドラマが日本テレビから生まれた、という点も見逃せません。私は『家政婦のミタ』は日テレだから実現できた、そう思っています。そのあたりをちょっとさぐってみましょう。

 2年ほど前、日テレの今は亡き会長・氏家齊一郎氏がドラマ製作現場の意欲を生かしていく、旨の発言をされていました。

 恐らくはこういう方針が、製作現場を発奮させ、自由なドラマ作りの土壌が出来たのだと私は思っております。当時、私自身、本ブログでこの氏家氏の発言を引用して言及しております。

http://tvdramadb.blog23.fc2.com/blog-entry-428.html
銭ゲバ第4回 2009.02.08
 ちょっと、上記リンク先から該当箇所を引用してみましょう。


 先週の週刊東洋経済(2009年1月31日特大号)は「テレビ・新聞陥落!」という特集でしたが、そこで日本テレビ取締役会議長の氏家齊一郎氏が取材に応えています。
 テレビが魅力を失っている、と記者が指摘し、「どのチャンネルを見ても同じような番組をやっているように見えてしまう。制作費を削減するために、スタジオ撮りのバラエティ番組ばかりが目立っている」と氏家議長に問いかけます。
 それに対する氏家議長の回答がなかなか味があります。以下、ちょっと長いですが引用してみます。
-------------------------------------------------
(引用開始)
 確かに、今はどこを見ても同じようなことをやっている。これは13歳から49歳までのコア、しかもF1・F2という女性を対象にした番組作りをするから。スポンサーは、そこに対して遡及力がどれだけあるかで広告を決めるため、どうしてもそこの人たちにおもねるものをつくる。
 娯楽番組であるかぎり、それはそれでいい。だが、そんなことばかりやっていたら飽きられる。その危機感を現場は持っている。テレビがやるべきテーマ、新しく発掘しなければいけないテーマというのは、やはりある。「ハケンの品格」「女王の教室」「14才の母」などのドラマが当たったが、これらは国民が潜在的に大きな問題だと感じてはいるものの、なかなかオープンにはできないテーマを扱っている。

 たとえば「女王の教室」は受験競争を扱っている。受験競争をやれ、それが現実なんだと先生が言うわけだ。みんな本音はそう思っている。何とか自分の子供をいい学校に行かせたいと思うんだ。だけれども、それをなかなかオープンにはできなかった。しかし、ドラマで取り上げると、多くの視聴者が付いた。
 「ハケンの品格」「14才の母」もなかなか正面からは取り上げることが難しい今の社会問題をドラマとして取り上げている。こういう問題を取り上げることは、非常に社会的な意義があるし、みんな見てくれる。
 今後の基本的なわれわれの番組のつくり方は差別化だ。絶対に均一化じゃないぞと。うちの制作はわかっていると思う。
(引用ここまで)
-------------------------------------------------
 なかなかいいことを言っています。実際にはなかなか空回りしている番組も多く、必ずしも氏家議長が目指す方向が日テレで実現できているわけではありませんし、『女王の教室』については管理本位の視点の強調が私はどうも好きになれないのですが、ともあれ、日テレが「今の社会問題をドラマとして取り上げる」というのが明確な方針であることにちょっとエールを送ってしまいたくなりました。


 いかがでしょうか。

 まさに昨今のテレビドラマの企画が抱える問題点を的確に理解して、作りたいものを作ることができる環境づくりに注力されてきたことが分かります。

 確かに、こういう氏家体制のもとで、ここ数年の日テレのドラマは以前と打って変わって、生き生きと、思わず見てみたいと思わせるものが少なくなくなってきていました。

 日テレの躍進と比べると、フジやTBSは残念ながら、昔ながらのドラマの発想から抜け切れていない面があるように思えます。

 原因は分かりませんが、例えば、過去にヒットしたドラマを作った人たちが段々と局の幹部になって、大昔のドラマ作りの「成功律」を若手に押し付けているといったことはないのでしょうか。過去の成功経験にこだわって若手のドラマ作りに口出しし過ぎているのではにでしょうか。作り手が本当に作りたいドラマを創ることが出来ない状況になっているのではないでしょうか。
 そんな中で、「現象」と呼べるほどになるドラマがなくなったのではないでしょうか。

 日テレは長年の連続ドラマ低迷の中でそういう「ゴチャゴチャ言う」人たちが少ないのも功を奏しているのかも知れません。仮に『家政婦のミタ』が他局で作られていたとしたら、こんなストレートな作品にはなっていなかったのではないか。いろんな視聴者ウケのいい設定やエピソードが挿入されていたのではないか。
 そうなると今回のような爆発的な人気は得られなかったのではないでしょうか。

 やはり、作り手の強い「思い入れ」がストレートに投影された作品でなければ視聴者の気持ちをとらえることは難しいのではないでしょうか。そういえば『モテキ』も作り手の強い思い入れが作品に感じられました。

 残念ながら氏家氏は昨年3月に亡くなられてしまいましたが、こういう現場のヤル気を生かした辛抱強い方針が、今回の『家政婦のミタ』の大ヒットにつながったといえるのではないでしょうか。

 フジやTBSなど長年ドラマ制作に実績ある放送局はかえって昔の成功体験に引きずられている。若手の作り手に本当に作りたいドラマをまかせてみたり、過去のデータとかでない発想でのドラマ作りを志向していくことが必要なのではないでしょうか。

 日テレはドラマの人材を連続ドラマ2本に集中させているところも見逃せません。かつて日テレには2時間ドラマ枠が火曜・水曜・木曜の3つあったのです。(うち木曜の1枠は讀賣テレビ系の枠でしたが)
 とくに「火曜サスペンス劇場」は2時間ドラマ枠の中でも佳作を多く輩出する枠としてドラマファンの間でも定評ある枠でした。それが今は2時間ドラマ枠はナシで局のドラマ作りのパワーを連続ドラマ2本に集中させているわけです。当然作り手の気合も入ってくるのでしょう。
 また、あまり劇場用映画の製作にも欲を出していないところもいい。劇場用映画を多数、製作している局だと、段々と局内の作り手の最終目標が劇場用映画になってしまっている面があるように見受けられるのです。その結果、テレビドラマへの力の入れ具合がどうしても緩んでしまうのではないでしょうか。

 長年、「ドラマ強化」をはかってきた日本テレビ。ようやくその努力が実を結びつつあるのではないでしょうか。その先には、今の2枠しかないゴールデンタイムのドラマ枠をもう1枠ぐらい増やして、その後の新しい作り手の意欲を満たす枠にしてもいいかも知れません。

「家政婦のミタ」DVD-BOX「家政婦のミタ」DVD-BOX
(2012/04/18)
松嶋菜々子、長谷川博己 他

商品詳細を見る

PageTop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。