FC2ブログ

てれドラぶろぐ

テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

女優、田中好子さん死去

 先日、「報道ステーション」をなにげなくつけていたら、女優の田中好子さんが亡くなったというニュースが飛び込んできてちょっと愕然とさせられました。55歳。

 1992年に乳がんが見つかり、治療を続けながら芸能活動を続けていたとのことですが、ごく一部の近親者にのみ知らされていただけだったようで、突然の訃報で驚かされる人も多かったようです。

 田中好子さんといえばキャンディーズのひとりということで青春時代の思い出として特別の存在として記憶にとどめている人も少なくないでしょう。

 残念ながら私はキャンディーズをリアルタイムで経験している世代からちょっと出遅れた世代です。リアルタイムの記憶に残っているのはキャンディーズ解散の1年ぐらい前からで「ザ・ベストテン」で後発のピンクレディーに押され気味で出ていた時分の記憶が残るのみです。

 ただ、キャンディーズに興味を持った時期はありまして、それはその後、大学生になった1986年から1990年にかけて。過去の歌謡曲、日本のポップスに興味を持ち、ミニコミ誌「よい子の歌謡曲」などを読んだり都内の中古レコード屋をあちこちまわってたくさんのアナログレコードを収集したりしていた時期です。

 そこで、遅れて、キャンディーズの楽曲に親しみ、ハマリました。

 「あなたに夢中」から「年下の男の子」「やさしい悪魔」「わな」「春一番」などなど、かなり聞き込んだ記憶があります。
 個人的には「卒業」という曲がお気に入りで、コテコテのベタな歌謡曲ですが、そこがいい。(ちなみにこの曲、バラエティ番組「見ごろ食べごろ笑いごろ」の番組内のドラマ「美しき季節」の主題歌でした。)

 で、その時期になって気づくのはキャンディーズはピンクレディーとは別物の存在なのだということです。キャンディーズが、フォークやニューミュージックの軽やかな心地よさをベースにもち、さわやかなガールポップを志向していたのに比べ、ピンクレディーは電気仕掛けのセンセーショナリズムを目指した面がありました。そして、これは途中から子どもの支持が増えて路線変更されたものの、当初はちょっと性的なイメージも暗示した楽曲が多く、今から考えるとマドンナなどに通じるお色気路線的側面もあったように思えるのです。ところが同時期に出ていたがゆえに芸能マスコミ的にはキャンディーズとピンクレディーを比較する思考が生まれてしまっていたように思えます。当時、キャンディーズ好きだった人がその比較を一蹴していた理由が理解できるのです。

 ご存じの通り、キャンディーズの活動当初は田中好子さんがセンターでしたが、途中からセンターを伊藤蘭さんに変えます。すると不思議なことに、ヒットが出だします。私などは、個人的には親しみやすさという点で3人の中では田中好子さんが一番、好印象を与えていたように思えるのですが、ちょっとクールな雰囲気漂う伊藤蘭さんがセンターになり、楽曲的にも恵まれた面があるのかもしれません。

 さて、今回の訃報、田中好子さんについて、「演技派」と称する報道がいくつか存在しています。確かに演技についてのうまさに異論はありません。ですが「演技派」というのはいかがなものでしょう。ちょっとこの言葉の響きには違和感がわきます。
 というのも、テレビドラマや映画などを見ていて「ああ、この人は演技派だなぁ」と思うことがありますが、そういう「演技派」と田中好子さんはちょっと違うように思うのです。田中好子さんの出演されているドラマや映画を見ているとき、劇中の田中好子さんの芝居が「巧い」と意識して気に留まることはほとんどなかったのです。でも演技はうまくなかったのかといえば決してそんなことはない。むしろ、劇中の人物として田中好子さんの芝居がぴったり収まっていることが多かったように思います。

田中 好子 - テレビドラマ人名録 - ◇ テレビドラマデータベース ◇
http://www.tvdrama-db.com/name/p/key-%E7%94%B0%E4%B8%AD%E3%80%80%E5%A5%BD%E5%AD%90

 考えるに、芝居を芝居と感じさせず演技すること。そのほうが真の演技といえるのかも知れません。それを田中好子さんは意識せず実現されていたように思えます。
 ドラマ全体の中で自分の役がどういう位置にいるのかを、全体バランスから考え、それに応じて必要なら前に出て、そうでなければ目立たず、ということを心がけておられたように思えるのです。
 そしてこの女優として大切な感性は、キャンディーズでの活動の中で育ったことで身についた面があるように思うのです。それはつまりこういうことです。

 先にふれたとおり、キャンディーズ時代、当初は自らがセンターに立っていた。ところが人気が大きく出ることはなく伸び悩んでいた。途中から伊藤蘭さんにセンター位置を譲ることになります。
 そのことも甘んじて田中好子さんは受容されたわけです。
 自分に何が求められているのか、何ができるのか、それぞれの役割を自覚されていた経験が反映されている面があるように思えるのです。キャンディーズの3人の中での自分の立ち位置を常に考える習性が身についた面があるのです。

 田中好子さんで、最も印象に残っているのは映画「黒い雨」(1989)のヒロインですが、これも実は「演技派」と意識させるほどの熱演がほとばしるというものではなく、どちらかといえば一貫して抑制したトーンの演技でして、主演なのにほとんど寡黙で存在感を消そう消そうとされているかのように映るほどなのです。ですが、物語後半、風呂場でゾロッと抜けて落ちた自分の髪を手に無言で何故かちょっと微笑む場面で一気に存在感を引き寄せています。残留放射能の影響がついに出てきた衝撃の場面ですが、物語全体のバランスからいってそれまでの抑制された芝居がここで効果を生んでいるのです。

 テレビドラマでは、『おしん』(1983、NHK)あたりから印象に残っていまして、『金曜日の妻たちへII』(1984、TBS)、『瑠璃色ゼネレーション』(1984、日テレ)と立て続けに出演。そのあたりの田中好子さんの芝居はかなり目立っていました。とくに『瑠璃色ゼネレーション』(1984、日テレ)で風間杜夫さんに離婚をつきつける妻の役あたりは目立つ芝居で記憶にとどまっています。

瑠璃色ゼネレーション - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-21399

 ところがその翌年演じた『親戚たち』(1985、フジ)あたりから田中好子さんが演じる役柄が微妙に変わったように映ります。ここでは、何故かほとんど目立たない脇の芝居に転じているのです。あまり出張らず、むしろ遠慮がちな芝居に終始した印象でした。

親戚たち - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-22045

 このあたり以降から「脇の芝居」が田中好子さんの中で意識され、やがて前述の映画「黒い雨」で、大きな評価につながっていくような気がするわけです。

 「黒い雨」で国内外の賞を多数受賞されて以降はテレビドラマでも重い役柄が増えますが、それでも特段気負った雰囲気も感じさせず、必要に応じて「芝居の軽重」を調節されているようでした。

 以降の芝居で最も印象に残ったのは、『水曜シリーズドラマ/ふたつの愛』(1998、NHK)でしょうか。ここでは珍しく抑制した芝居ではなく、久々に「主役の芝居」をされていたように映ります。ここで田中好子さんが演じたのは、二人の男性に翻弄され愛の葛藤に懸命にあがき苦しむヒロインです。脚本が「強い女性」を描くことで知られる大石静さんであったこともあり、全編にわたり「強い芝居」が求められた面があったのかも知れません。

ふたつの愛 - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-32934

 田中好子さんが残したものは何でしょう。
 確かに「黒い雨」や『ふたつの愛』での強い印象の田中好子さんのイメージも残りますが、やはり私にとっては、あの、キャンディーズで右側に立って、元気に、そして、にこやかに自分の役割を務めていた、爽やかな春風のような存在感の田中好子さんのような気がいたします

みごろ!たべごろ!笑いごろ!! キャンディーズ プレミアムBOX [Blu-ray]みごろ!たべごろ!笑いごろ!! キャンディーズ プレミアムBOX [Blu-ray]
(2010/04/23)
キャンディーズ、伊東四朗 他

商品詳細を見る

PageTop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。