てれドラぶろぐ

テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

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一見通俗的なだけに見えた『セカンドバージン』(NHK)の面白さ

 さて10月期の連ドラはいずれも終盤です。
 私の印象では比較的この10月期の連ドラは豊作でして、個人的に気に入っている順で書くと、『Q10』(日テレ)を筆頭に、『SPEC』(TBS)や『セカンド・バージン』(NHK)、『フリーター、家を買う』(フジ)、『流れ星』(フジ)などなど。
 これに、前クールから続いている大河ドラマ『龍馬伝』を含め、なかなか楽しませていただいたのです。

 そんな中、当初予想をいい意味で裏切って健闘しているのが『セカンドバージン』(NHK)であります。

 この『セカンドバージン』、観る前はどうにも通俗的、ありきたりなだけの不倫ドラマを想像していました。観る前に、資料を一見した段階では、最近、軟化した(?)NHKが、かつて民放ドラマが多数手掛けた不倫ドラマをはじめて本格的に作ってみた、というところが売りの作品だろうか?と見えました。ただ、その段階で既にちょっと違うかも、と思えたのは、描き手が、演出:黒崎博さん、脚本:大石静さん、だというところ。
 黒崎さんは知る人ぞ知る、広島放送局で『帽子』や『火の魚』を発表した期待の描き手ですし、脚本の大石静さんは既に脚本家としての経歴は長いですが、昨年、『ギネ』で新境地を開いた印象を受けた描き手であります。
 そういう組み合わせの描き手たちが、ただただ使い古された不倫ドラマを手がけるだけだろうか?と思ったのです。

 で、見はじめてみると、例えば不倫相手の年下の男が偶然隣家に越してくるあたり、実に使い古された設定だったりするわけです。また海外を舞台に愛をはぐくむあたりの描写はちょっとバブル期のドラマをほうふつさせられます。

 ですが、このドラマはなかなかタダでは転びません。
 最初、極めて個人的な、不倫をめぐる愛のトライアングルの相剋劇だったものが、徐々に話が拡大。ついには経済犯罪で世間を揺るがす社会的事象にまで話がスケールアップしていきます。そのプロセスはなかなか見せてくれました。内面的な心理劇からスタートしたお話が徐々に拡大。妻が夫の不義を知り、報道機関や検察に暴露するに至り爆発し、社会事件にまで拡大する。つまりはNHKが得意とする経済ドラマ的要素にたどり着くダイナミズム。それを堪能させていただいた面があります。
 世間を席巻する様々な社会的な事件というものはすべて本作のように根源は人々の心理的な思いが積み重なって生じている。そのことを端的に浮かび上がらせてくれた面があります。

 企業買収のスキームもある程度、それらしき雰囲気を醸し出し、長谷川博己演じる鈴木行の人物像は、まるでかつての村上ファンドやホリエモンをめぐる現実の経済事件を下敷きにした生々しさが漂っていました。主人公が経済事犯として逮捕されるまでのプロセスは見応えがありました。

 あと、このドラマ、余計な心理描写を説明的に行っていないところも成功しています。例えばそもそもなぜ鈴木行(長谷川博己)は中村るい(鈴木京香)に惹かれたのか。その謎は感覚的にしか説明されていません。あるいは、草笛光子扮する老作家が何故、途中で中村るい(鈴木京香)を拒絶するようになったのか。その謎は今のところ直接的には説明されていません。(おそらくは布施明が鈴木京香に惹かれたことによる嫉妬心を想像させられますが)
 このあたりの謎は小説版を読めば解けるのかも知れませんが(笑)

 その一方で、鈴木行(長谷川博己)の持つ長所と短所。例えば、若さゆえの自己の知性への疑いなき自信と過度の慢心。そして他者の軽視。単純な価値観。そういった若々しい一面が、中村るい(鈴木京香)の心を捉えていたことが出版社社長(段田安則)の目を通して間接的に語られていたあたりは、単純に心理説明だけでなく、この作品に価値観の多様性を与えていたように思います。

 ちょっと残念な部分もあります。まずは、鈴木行(長谷川博己)の人物造型。これがいかにも女性から好かれる理想的な男子像すぎるところ。このあたりは大石静さんの理想的な男性像を具現化している面があるのかどうか、同性から見るとちょっと食い足りない。
 あるいは、物語の展開でも、執行猶予判決を受けて以降の展開、例えばチャイナ系ファンドから命を狙われ闇の世界に身を落としていくプロセス。このあたりになると残念ながらちょっと仮想の空想じみてしまっている面は否めません。前回ラストではシンガポールで凶弾に倒れるという、第1回冒頭部分とシンクロしたところで終わっていましたが、あのあたりのプロセスはちょっと絵空事じみてしまっています。
 いくらチャイナ系のファンドだからといっていちいちこんな報復活動に血道を上げているとコストがかかってペイしないような気がします(笑)

 一方、役者の皆さんの好演も光ります。

 年下の鈴木行と不倫に落ちる出版社役員の中村るい演じる鈴木京香は、今回、敢えて、老けを強調したかのような描写を受け入れて存在感を示してくれました。

 またその中村るいに夫を奪われる鈴木万里江を演じた深田恭子もなかなか上手い。
 最初はちょっと凡庸な若妻に映っていたのに、夫の不倫を目撃すると一転、恐ろしいばかりの変容を見せていきました。打ってかわって、痛々しいまでの冷徹さな美しさ漂う存在感を示してくれています。
 特に、このドラマの中でも名場面の一つに数えられるであろう、あの、夫の不倫を目撃した瞬間の深田恭子の芝居もなかなか。単純に驚きの表情を見せるという陳腐な芝居では決してなく、一見、何の表情の変化も見せないのだけれど、それゆえ心の底に受けた深い衝撃の重みを感じさせてくれました。あれは芝居の巧さもさることながら、そういう芝居を求めた演出の冴えでもあるのでしょう。


 それにしても、昨年、『ギネ』の感想でも書きましたが、大石静さん、最近冴えています。見応えのある、クールな視点のドラマが続きます。

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(2010/11)
大石 静

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