てれドラぶろぐ

テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

『龍馬伝』の舞台裏が詳述された好著「龍馬デザイン。」(柘植伊佐夫氏著、幻冬舎刊)

 大河ドラマ龍馬伝』も終わり、一気に師走気分になりつつありますが、そんな『龍馬伝』関連本のオススメをご紹介しておきましょう。
 その本は、柘植伊佐夫氏著『龍馬デザイン。』(幻冬舎)

 大河ドラマ『龍馬伝』は、ご存知の通り、これまでの大河ドラマとはガラリと違う様々な手法が導入されています。その最たるものは、撮影に大河ドラマとしてははじめて「プログレッシブカメラ」を使用したこと、マルチカメラを駆使した技法などによって、まるで「その場で歴史が生まれているかのような」生々しさを生んでいるところあたりでしょう。それ以外にこの『龍馬伝』でもう一つ、大きい変化が、「人物デザイン監修」という役目のスタッフを加えたというところのようです。
 と、いっても「人物デザイン監修」って何のことかいな?と思っておりました。本著は、その『龍馬伝』で「人物デザイン監修」を務められた柘植伊佐夫さんの手によるドラマ『龍馬伝』の制作日誌のような本なのであります。

 読むと分かるのは「人物デザイン監修」の範囲というのは、個々の登場人物の衣裳の選定からメイクの仕方、ヘアデザインの組み立て、風俗面での描写、実際の映像の中での微妙なニュアンスの体現などなど、実に膨大な範囲だということです。
 そしてさらに、このドラマ『龍馬伝』がいかに大変な仕事だったかということ。さらに、これまでの大河ドラマが培ってきたノウハウのようなものをNHK自らがいかに棚卸ししたかということが伝わってくる本でありました。

 本の中身の構成はもっぱら毎日毎日の日誌形式。したがって、どこを読んでもそれなりに直ぐに読めるメリットがあり、先日から手元にいつも持ちながら、時間が出来れば、適当なページを広げていきなり読んでみる、というようなことをして楽しんでいます。

 単純な撮影日誌的なものでありながら、そのところどころで、この書き手なりの論考のようなものが書かれていて、そこにはNHKという組織の凄さと凄さゆえの弱点のようなものが書かれていたりするわけです。
 例えば、大河ドラマというのはだいたい1年間の長丁場のため、終盤になってくると予算も消化してしまい、あとはほとんど惰性のようにしてエンドを迎えることが多い。だが『龍馬伝』ではそれではいけない。最後に向かってぐんぐん盛り上げていかなければならないのだ。というようなことを書かれています。我々は大河を見ているといつも終盤になると急に地味な展開になるなと感じることがあるのですが、これを作り手の側も自覚しているということが分かりました。ある種、大河ドラマ特有の問題点のようなものが自覚されているのですね。

 あるいは、こんな文章はどうでしょう。テレビドラマの「クレジット表示」に関する論考です。ちょっと引用してみます。

---------------------------------------------------
 夜の休憩時、大友監督と五階食堂で一緒にお茶を飲む。マルチカメラによる撮影手法は、ひとつのシーンをカット割りせず続けざまに撮りきってしまうものなので、役者に対するメンテナンスが万全でないといけない、という主旨の話をされていた。これは自分も同感で、視覚的環境を本質に近づけるとともに、役者の気持ちをいかに良い状態にもっていくかというのが成功の鍵だと思っている。現在の扮装チームはどうか。以前よりは悪くない。悪くないがまだまだである。その「まだまだの本質」はどこにあるのかと考えたなら、それは匿名ジャーナリストの無責任さに似ていて、大河ドラマのクレジットロールに自分の名前が載らないという事実が、逆説的な安心感や、あるいは無責任さ、低いモチベーションを内在させていることによる。簡単に言えば、自分の名前が出たら頑張らざるを得ないでしょ、ということだ。これには監督もおおいに賛成しており、結局クレジットロールに自分の名前が載るということがいかに大変でしかも重要なことなのかということをNHKやスタッフ自身も理解していないかもしれないと言っていた。仮に在野の仕事であればこのクレジットこそもっとも重要な価値のひとつだということに議論の余地はない。

【柘植伊佐夫氏・著「龍馬デザイン。」(幻冬舎刊)046ページより引用】
---------------------------------------------------
 いやぁ、まさにこの部分は我が意を得たり!という感じの箇所でした。
 そうなんですよね。ここ10年ほど、民放ドラマの出演者やスタッフなどの画面表示(=クレジット表示)というのは増加をたどっていて、以前なら表示されないような業務までゴソッとクレジット表示されるようになっています。
 これは制作費が伸びない中でスタッフのモチベーションをいかに維持させるかというところに知恵を絞った手法かも知れない、と私も本ブログで以前書いたことがあるのですけど、上記の文章を読むとやはり大きく外れていないのですね。クレジット表示があるかないかで確かに作り手の意気込みというのは大きく影響を受けるというのは想像に難くありません。
 ということは、そのクレジット表示を記録している「テレビドラマデータベース」のような仕事も多少はドラマ作りのモチベーション向上に役立っているのかな、と思えてきます(笑)

 まぁ、上記のような書き手のいろんな思索の痕跡も書かれていて、なかなか興味深い一冊になっていてオススメです。ただ一点、欲を言えば、索引が欲しかったかも知れません。日誌ですから、前に読んだ話題がどのあたりに載っていたのか、後から探すのに苦労することがあるのです。


龍馬デザイン。龍馬デザイン。
(2010/11)
柘植 伊佐夫

商品詳細を見る

PageTop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。