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テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

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木皿泉『Q10(キュート)』が描こうとしているもののすごさ

 さて、10月クールも早いもので、もう中盤から後半にさしかかりつつあります。今のところ、もっとも楽しませていただいているドラマは、『Q10』(日テレ)でしょうか。
 はじまって1~2回ほどは、なかなか面白い、と思っていた程度だったのですが、3回、4回と回を重ねていくと、う~んと唸らせられることが連続するようになってきています。

 このドラマ、物語の中心として描かれているのは、ある高校に突如持ち込まれた「人間そっくりのロボット」であるキュートをめぐって次々と起きる出来事です。このロボットに扮する前田敦子扮するキュートの存在感がなかなか愛らしく、好ましい。ロボットという無味乾燥な存在に、「存在感」を生ませている
 「パフッ」という返事。素っ頓狂な機械的な言葉遣い。突然、話さなくなったり、涙を流す。
 主人公の高校生は、そんなキュートの行動に、心をかき回され、悩まされる。それはひょっとすると恋なのかも知れません。
 コミックのヒロインに恋する同級生を通じて、「人間」でない「異形のもの」に愛を感じることの凄さ、尊さに気付くプロセスも描かれました。

 普通なら絵空事じみているこの設定をどこか、「あっても不思議ではなさそうなもの」としてギリギリのところでリアリティを生ませているところがすごいかも知れません。

 そして、それ以上にこのドラマが唸らせられるのは、どこにでもありそうな普通の高校生の淡々とした目線から「人生の残酷な真実」のようなものが描かれているところなのです。
 以下、そのあたりを詳述してみます。

 このドラマでは、ごく普通の高校生が時にナイーブに、繊細に、どこにでもありそうな日常の風景の中から、普遍的な人生の真実、のようなものを見いだしていきます。どこにでもありそうな平凡な風景。平凡さの中にこそ実在する、「物事の根本原理」というもの。それが、佐藤健扮するごく平凡な高校生の目線を通じて描き出されているのです。
 そんな中で導き出される「物事の根本原理」というものは、時に悲しい「人生の真実」を明るみにしてしまう。 「宇宙」というものはいずれ崩壊してなにも消えて無くなってしまうものだという。そういう「根本原理」が真実なら、「永遠」というものは「実は」存在しないことになる。すると、我々が日々、がむしゃらに生きて、必死で生き、自分が「この世」に存在したという痕跡のようなものを残そうとあがいているような、そんな人間の「行い」は、すべて無意味なことになるのではないのか。いずれこの世界がすべて雲散霧消してしまえばすべて塵と消えてしまうのだから。いくら頑張ったっていつか消えてしまう、そんな「はかない」人生というもの。そんな現実の中で我々は生きているのだという「真実」…。このドラマは、悲しい、切なくて、はかない、「現実」というものに、気付いてしまう高校生が描かれています。

 前回放送された第5回では、佐藤健扮する主人公の、ごく平凡な楽しい家族の幸福が描かれていましたが、その幸福な満ち足りた瞬間に彼は思うのです。「この、ささやかな幸せが永遠であってほしい」と。ひょっとすると永遠に続きそうにみえる、そんなどこにでもありそうなささやかな幸せも、実は有限なのだということ、やがて消えてしまうのだということ。その「人生の残酷な真実」というものに気付いてしまう高校生が描かれていました。
 この場面を見て、そういえば私も中高生のころ、ふと、家族の中の些細な団欒の中で、いずれこんな幸せも消えてしまう。この幸せが少しでも長く続いて欲しい、と、心の中で、切実に、真剣に、願ったことを思い出しました。あのとき、楽しく笑っていた父と母。30年近く経った今、あのとき笑っていた父は今はもう亡くなってこの世にいなくなっています。そして母も年老いて、屈託なく笑う機会も減ってしまいました。やはり、あのとき、永遠に続くかに思えた平凡な家族の団らんというものは戻って来ないのです。

 そういう悲しい現実というものがこの世には実にたくさん散らばっている

 このドラマは、そういう、どこにでも転がっていそうな「厳格な真実」を、ごく普通の高校生の目線から描くという、ある意味、きわめて深い視点にチャレンジしているドラマなのです。

 このドラマが提示している中での「救い」は、そんな悲しい現実に気付いた高校生が、決して人生を悲観的に捉えず、限りある人生、限りあるこの世界だからこそ、今を大切に生きるべきでないか、という、ある意味、前向きな考えに至っているところなのかも知れません。ですが、そこはひょっとするとこのドラマの書き手が、高校生を主人公にしているゆえに、一応の妥協として打ち出した目線かも知れません。「悲しみだけが人生だ」というのはある意味真実かも知れないわけです。

 書き手の木皿泉さんは、これまでこの枠で『すいか』や『野ブタをプロデュース。』を手掛けてこられたのですが、今回は、これまでよりも一層、純化した形で、テーマに向かい合っているように思えます。

 こんな、土曜21時という、ごく気楽な時間帯の民放ドラマで、そんなものに挑戦しているというのは、ひょっとすると、もの凄いことなのかも知れないのです。

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