てれドラぶろぐ

テレビドラマ研究家の管理人が語るドラマなどの話題

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『モテキ』がいい。

 業界的には、夏期のテレビドラマは「夏枯れ現象」という言葉がささやかれがちなのですが、今年は残念ながらその言葉どおり、7月クールのドラマというのがいずれも、もたついている印象です。
 昨夏は『ブザー・ビート』という、暑い夏をものともしない快作が放送されて、後半ややトーンダウンしてしまったものの、大いに盛り上がった記憶があるのですが、今年はそういうドラマが見当たらず、すばり夏枯れ状態が危惧されます。まぁ、『ホタルノヒカリ2』は期待通りのまったりとした展開でありますが、『夏の恋は虹色の輝く』にしろ、『GOLD』にしろ、『うぬぼれ刑事』にしろ、どこか、斬新さがなく、もう一つ、抜け切れていないところがあります。どこか、最初の導入部で未だにうろうろしている印象なのです。
 まぁ、まだまだこれからの段階ですからこれからも好意的に見つづけて参りたいと思います。

 というわけで、ちょっと気がかりな7月期のドラマの立ち上がりなのですが、一本だけ、『モテキ』(テレビ東京)がかなりイイ感じで進行しています。

 何がイイって、月並みな表現ですが、等身大の若き男性の恋の悩みがかなり切々と丁寧に描かれているところがイイ。しかもその悩みをかなり踏み込んで描いているのです。その生々しさは、テレビドラマとしてはひょっとすると前人未踏の仕事のような気がするほどです。

 このドラマを見ていると、当たり前のことに気づかされます。それは、世の中は、いわゆるカラッと明るい男性ばかりじゃないんだ、ということ。当たり前のことなんですけど、テレビドラマの世界はどこか、洗練された恋愛ばかりが描かれてきたような気がしてしまうのです。こういう、性体験と恋愛にコンプレックスをもったまま、行ったり来たり悩みまくっている男性というのは少なくないということに気づかされるのです。
 プライドばかり高くてなかなか好きな女性に接近できない。好きだから嫌われたくない。だからやたら距離を置こうとする。そういう悩みがぐるぐると循環しているようなものなんですね。
 後になってみればなんであんなことで悩んでいたのだろう、と思ってしまうのだけど若いあのときの本人には切実な問題なのです。そういう不器用な恋愛が悲しいまでに生々しく突きささってきます。何か見ているこちらも身につまされるような痛々しさを感じてしまうという、実に生々しいドラマなのです。

 そして、実はこのドラマ、世の内向的な若き男性の恋と性の悩みが描かれているように見えて、一方として、そういう男性に惹かれてしまった女性のツライ気持ちも描いていることに気づかされます。
 とくに前回の放送分では、松本莉緒がそういう悩みの心境を外面的にうまく表現しています。
 松本莉緒が好きなのに好きと言えず、2年間もその思いを秘めたまま何度も後悔する主人公が痛々しく、また切ない。そしてついに再会し、最後の最後でようやく「好きだよ」と白状した森山未來。その切なさに松本莉緒が感動しながら「その言葉が聞きたかったのよ」とキスをする。

 現実にありそうな話がここまで魅力的に描き出せてしまうのだなと感銘を受けました。

 演出・脚本は大根仁さん。だいぶ以前にこの人のブログを拝読して、山田太一さんの『早春スケッチブック』を熱心に支持されていることを知り親近感を感じまして、以後、『劇団演技者。』や『去年ルノアールで』、『週刊真木よう子』、『湯けむりスナイパー』と、ずっと気になってきたのですが、この『モテキ』で何か一つの到達点を示して下さったような印象を持ちました。

 このドラマを拝見していると、6年前に、フジテレビが発行する「AURA」という雑誌に書かせていただいたときの内容を思い出してしまいます。私はそこで、「テレビ関係者は、『もうテレビドラマで描ける対象は、ほとんど一通り描きつくしてしまった』と思っているのではないか。しかし本当にそうだろうか?世間には今までテレビドラマが描いてこなかった身近で切実な悩みが転がっているのではなかろうか」と書きました。その上で、「例えば恋愛ドラマでは、世の中に、「ウケミン」と呼ばれる恋愛に受け身の男性が増えていて、女性はそういう男性と恋をすることに苦しんでいることがある、テレビの恋愛ドラマはそういう生々しい現実の悩みをもっと取り上げていくべきではないのか」と書いたのです。
 その後、その記事を読んでくださったわけでもないのでしょうけど、『電車男』なる、恋愛に奥手なオタクの男性を主人公にしたドラマが制作されて、この方面に多少とも光りがあたったような気がして、さすが何事もビビッドに世の悩みごとをテーマに据えるものだと感心させられたものです。

 ですが、そういう、恋愛ベタな男性の恋物語、という『電車男』がはぐくんだモチーフは、それっきりで、その後類似作も続かず、ここ数年にいたっては影をひそめつつあります。その事情として、恋愛ドラマが低調だから、という説明が成り立つのかも知れませんが、逆説的に、そもそも恋愛ドラマが下火なのは、世間にある、生の恋愛の悩みが描かれていないから、ということかも知れないと思えるのです。

 そう考えさせられたのは、この『モテキ』で、かなりの部分まで生々しく世の若き内向的な男性の恋の悩みを描いているのを目にしたからなのであります。

 放送時間帯としては深夜枠。やはりあまりにも生の人間の悩みを赤裸々に描くには、時間帯としてゴールデン、プライムタイムはまだまだ憚れる面があるのかも知れません。

 それにしてもついに念願が成就していくかのように見えるこのドラマ、これから何となくですがこれからもっと切ない展開になっていきそうな気がします。

 まずはですね、ちょっとこれから第1回目に遡って視聴してみるつもりであります。でもねぇ、もう一度見返すにはちょっと切ないです。人ごととは思えぬ痛々しさを追体験しそうであります。

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